農業と生活困窮者支援を両立する

「お米バンクプロジェクト」

オフィスkiyoharuでは、2022年春、農業と生活困窮者支援を同時に進めていく「お米バンクプロジェクト」の実証実験を開始します。

「お米バンクプロジェクト」とは、お米の安定供給を通じて、貧困と農業の双方の課題の解決を提案するプロジェクトです。

問題意識 ―日本を支える米作りを取り巻く課題―

わが国では、主食である米の過剰生産と低価格競争が社会課題となり、1970年より国による減反政策が行われてきました。減反政策は2018年に廃止されたものの、日本各地での生産調整は未だ続いています。

減反に伴う転作には設備投資が必要な上に、一度畑にしてしまうと田んぼには戻しづらくなります。また、地域の水利等の環境が変わってしまう可能性もあります。

さらに、仮に小麦等に転作をしたとしても、海外産との価格競争があり、現在行われている政府からの補助金制度もいつまで続くかわからないため、農業者からは「できれば米作を続けたい」という声も聞かれます。

 

需要の視点ではどうでしょうか。「お米は余っている」とされる一方で、所得の減少やコロナ禍による貧困世帯の増加等で、お米を必要としている人は確実に社会の中にいます。

フードバンク等の社会福祉事業も盛んになっていますが、企業からの寄付は供給量が安定せず、農業者からの寄付も、高齢化に伴う離農者の増加により、今後減少していくことが予想されます。

需要・供給の双方の課題を解決する「お米バンクプロジェクト」構想

上記のように、「お米を作りたい」「お米が必要」という双方の課題を解決するために、オフィスkiyoharuでは「寄付→先行投資による数年単位でのお米の確保」を行うことができる「お米バンクプロジェクト」を構想しました。

お米バンクプロジェクトは、銀行が行う融資のように、事業に必要な資金を、個人や団体の寄付を受けた事業者が農業者に貸し付ける制度です。銀行の融資と違う点は、その返済が「お米」で行われ、供給を受けた事業者がお米を必要とする人に分配を行うことにあります。

 

例えば、とある福祉事業者が寄付で集めた700万円を農業者に前払いし、定価700万円、耐用年数7年間のトラクターを購入した場合、年間100万円分のお米を7年間福祉事業者に提供します。玄米30kg=1万円とすると、年間の提供量は3,000kgになり、その後7年間にわたり、同量の新米を福祉事業者を通して生活困窮者に届けることができます。

関係者それぞれのメリット

お米バンクプロジェクトは、福祉等の事業者、農業者、寄付者それぞれに以下のようなメリットをもたらすと考えます。

今後は実証実験を通じて、お米の安定的な供給や米作の継続のほか、企業や個人においてCSR(社会貢献)にも取り組むことのできる制度設計を行っていきます。

2022年度においては、北杜市の「農業法人こぴっと」と共同で、費用対効果や今後の課題を検証するための実証実験を、以下のような仕組みで行うこととしました。当初の構想図とは少し構造が違いますが、同様の効果検証ができると考えます。

 

なお、お米の寄付先として、認定NPO法人フードバンク山梨様等を想定しています。

「余りもの」ではない、おいしい食材を届けたい

昨今、政府の備蓄米をこども食堂に配布したり、災害用の非常食を生活困窮者に配布したり、といったニュースを目にするようになりました。これらはフードロスをなくし、食料を必要とする人に届ける取組であり、こうした取組が必要であることは言うまでもありません。しかし、どこか「生活に困っている人には余りものを配ればよい」という意識も透けて見え、QOL(Quality of life:生活の質)の視点が欠けているようにも思えます。

わたしたちの社会には、賃金格差やジェンダー・国籍等に基づく差別等の様々な問題が存在しており、生活に困窮することは必ずしも「自己責任」ではありません。生活に困っている人たち、特に子どもたちにおいしい新米を食べてほしい。お米バンクプロジェクトは、そんな生産者の願いが込められたプロジェクトでもあります。

プロジェクトの進捗について

2022年度、農業法人こぴっととオフィスkiyoharuの共同プロジェクトとして実証実験を行います。

本プロジェクトで購入した機器を用いたお米の栽培状況、寄付等の状況をオフィスkiyoharuの公式noteで随時発信していきますので、ぜひチェックしてみてくださいね!